読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

僕は水槽の中でクリスマスを見ているのかもしれない。

 電子や光子といった極めて小さい素粒子の振る舞いが量子力学で記述される。そして、量子力学によれば、これらの素粒子は、普段は確率として、ぼんやりとした霧の塊ように存在しており、観測を行なうまでは厳密な位置や速度などの状態を確定できないとされている。つまり、観測をしていない素粒子は、見るまでは存在していないとも表現できる。

 この非実在性は、素粒子のような微視的世界では厳密な実験で実証されているが、人間スケールの巨視的世界では、例えば月の非実在性ー誰も見ていない間は月は存在していないーというのは、通常の常識的にはあり得ないと考えられる。だが、本当に巨視的世界にも物理学的見地から量子力学非実在性が当てはまらないのかどうかは、これまで未解決だった。

 具体的には、ある物理系で実在性の破れを確認するためには実在性が満たすレゲット・ガーグ不等式と呼ばれる条件がその物理系で破れることを示す必要がある。この不等式は実在性が成り立てば必ず満たされるが、量子力学のように実在性が成り立たない系では満たされない場合がある。しかし、実験で直接レゲット・ガーグ不等式の破れを示すためには、量子性が保たれる時間内に3回の高精度な測定が必要などの厳しい条件があり実証が困難だった。

 そういった中、NTTと米国イリノイ大学は、実在性の破れの検証実験を行ない、電流状態という巨視的な量での実在性の破れを実証したというニュースがつい一ヶ月ほど前に報じられた。「この世のモノは見るまで存在しない“非実在性”は巨視的世界にも当てはまる」という見出しだったが、電流状態の巨視的状態がどれぐらいのものなのか分からないので、いまいちピンと来なかったのだが、シュミレーション仮説の勢いが増しそうな話だなと思った。このニュースを知るきっかけになったのはお世話になっている人がFacebookのTLでシェアしていたからなのだが、その人も同じような言葉と共にシェアされていた。

 つい先日、過ぎ去っていたクリスマスは悲喜こもごもの様子がMessengerやらInstagramやらTwitterやらで観測され、とんだ群像劇のようだった。最近、彼氏が出来たものの知り合ってから随分経つので相手を恋人として見れるか不安がっていた友達からの無事に接吻できた報告。自分に徹夜で仕事をしていたせいで恋人にそっけない態度を取ってしまって怒られた友人のため息。口癖のように寂しいとつぶやいていた知り合いが彼氏ができたようで嬉しそうな呟き。友達と楽しそうにホームパーティーをする様子。恋人とどんぴしゃで24日に別れてしまった連絡、などなど枚挙にいとまがない。

 そのどれもが日常からの伏線回収がされている様子に思えた。SNSを見てるだけで、なんだか群像劇の登場人物の人生のスピードが少しだけ加速しているように感じた。必然の一日のようだった。マグノリア/ポール・トーマス・アンダーソンならカエルが空から降ってきていただろう。仮に僕がもし水槽の脳だったとしたら、僕の脳みそに電極を繋げた誰かは随分と見事なストーリーテラーだなと思った。伏線と認識していなかったことが、あとから考えれば伏線のように感じることが沢山ある。未来は不可視だから面白いし、人生はこうして必然の瞬間がときたま訪れるから楽しい。

 

Merry X'mas

 

f:id:rikky_psyche:20161226124255p:plain