「You Are Nothing」

 

You're Nothing

You're Nothing

 

 
Iceage - Ecstasy video - YouTube

Iceageの1stアルバムの、Wireを彷彿とさせるようなポストパンクギター、同郷のSexdromeに大きく影響を受けたハードコアサウンドは、やれチルウェイブだやれToro Y Moiだと現実逃避しつづけへらへらと弛緩した自分のシャツの襟首をガッと掴んでぶん殴るかのようであった。生きることへの妥協を受け容れきれない10代の彼らの音楽は同年代の僕には大きく響き、その苛立ちを音楽にのせる彼らの姿が少しうらやましくも思えた。タイトルはNew Brigade(新旅団)。彼らは社会に妥協しきれない僕らに団結を求めた。彼らは間違いなく90年代前半生まれの自分にとって初めての同時代の「パンク」だった。当時のメディアの年間ベストにも軒並み、名を連ねたがその中でも異色であったし、とにかく醒めていた。

 そう、彼らはとにかく醒めていたのである。いくら部屋でチルウェイブを聴いてまどろんでもその夢には必ず終わりがくる。CDを停止したら僕らは再びコンクリートジャングルを歩かなくてはならない。だからこそ彼らは常に虚無を見つめて、コード感すらあいまいなシングルコイルのギターをかき鳴らし、不安定な高速リズムでドラムを叩いて、イアン・カーティスさながらのバリトンボイスで「僕は知っている 君に与えられたものすべてが消え去るのを」(Remember)と歌い、自らをIceage(氷河期 Joy Divisionの曲名と同じなのは偶然らしい)と名乗った。    

 決して音楽史的に見れば真新しい音ではない。80年代のハードコア黎明期のHusker DuDischargeを想起させる、といえばそれまでかもしれない。だが金融恐慌が起こり、オバマ政権の雲行きも怪しくなって多くの若者がリヴァービーでレイドバックした音を鳴らして引きこもる中、デンマークの10代の若者が虚無だけを見つめ、それでもライブハウスで血を流しながら叫ぶ という姿はとてもロマンティックに僕の目に映った。彼らはほぼあきらめている。それでも、いやだからこそ彼らは音楽をやめないのである。

 大きな評価を得た後の2ndアルバムでも彼らが丸くなった、ということはまるでない。タイトルからYou Are Nothing(お前は無意味)である。彼らは相変わらず「お前のモラルはどこだ?」と問いかけ(Moral)、「傷ついた心は戦えても、結局すべて同じに終わる」(Wounded Hearts)と嘆き、社会に対する不信感をよりあらわにしている。音楽性自体にとりわけ大きな変化があったわけではないが、ツアーで鍛えられたのかバンド全体のグルーヴが筋肉質になり、投げやりだったヴォーカルも表現力を増し、「誰もわかってくれない」という怒りと哀愁を行き来する。バンド全体の表現力が増したことで彼らの本質である虚無主義的なアティチュードにより説得力が生まれているのも素晴らしい。

 1228分、そのファストコア的な性急さと虚無主義的な視点はどこか快速東京にも共振するものがあるようにも感じるが、Iceageは彼らに比べてよりシリアスでストイックだ。決して笑わない。ひたすらに怒っている。こんな音楽はバンドじゃ久々に聴いた。

Reo Shimada